Shiny varieties

2007 年度の業績

2007年度も大阪大学大学院理学研究科COE特任研究員として、 プロジェクトに関する研究業務に専念させて頂きました。 本ページは 21 世紀 COE プログラム「究極と統合の新しい基礎科学」 第 3 班「原理の探求」平成19年度実績報告書の原稿を基に作成致しました。

研究概要

有理曲面の種数二曲線束とモーデル・ヴェイユ格子の研究

有理数体上で定義された代数多様体の有理点は盛んに研究されており、 三次以上のフェルマー曲線が自明な有理点しか持たないというフェルマー・ワイルズの定理はその代表例である。 私は複素一変数有理函数体上で定義された代数曲線やヤコビ多様体の有理点を研究している。

モーデル・ヴェイユ格子の理論は1989年に塩田徹治が確立した、 比較的新しい概念である。 複素一変数有理函数体上で定義された代数曲線には、 複素射影直線上の相対極小な代数曲線束を持つ複素射影代数曲面が一意的に定まる。 このとき曲線束の生成ファイバーが、元の曲線に一致する。 さて、曲線束の一般ファイバーはリーマン面となる。 その種数は一以上で、曲面は有理的とする。 また、函数体上の曲線が少なくとも一点は有理点をもつと仮定する。 函数体上のヤコビ多様体の有理点全体は、 有限生成アーベル群をなし、モーデル・ヴェイユ群と呼ばれている。 複素射影直線上の代数曲線束の切断曲線と、 函数体上の曲線の有理点には自然な一対一対応がある。 この対応はヤコビ多様体の其れに拡張されて、 複素曲面の因子の交点形式からモーデル・ヴェイユ群の自由部分に内積が導入される。 これがモーデル・ヴェイユ格子である。

代数曲線束の一般ファイバーの種数が一のとき、 モーデル・ヴェイユ格子は小木曽・塩田によって1991年に、 ルート格子 E8 をフレームとして、 曲線束の特異ファイバーに沿って詳しく分類された。 このときモーデル・ヴェイユ格子は、 最大階数ならば E8 に同型、 そうでないならば E8 の部分格子から決まる。 これが E8 のフレームたる所以である。 更に塩田は同年に以上の分類を応用して、 ブリスコーン等による E8 型有理二重点の変形理論をより精密な形で再構成した。

本年度も昨年度の研究を継続して、有理曲面の種数二曲線束を一層詳しく研究した。 小木曽・塩田による種数が一の場合と同じ水準に至る分類にだいぶ近づいたと思われる。

種数二曲線束は堀川穎二による顕著な研究結果がある。 種数二曲線束の相対標準束に基づいて、 特異ファイバーが曲面の大域的な不変量と関連立てながら六系統に分類されている。 特異ファイバーの種類と本数から、曲線束の相対的不変量の一つとして、 堀川指数が定まるが、有理曲面に特化すると堀川指数は零、一、二、三の四通りである。 さて、堀川指数が零の場合のモーデル・ヴェイユ格子の研究は1994年の齋藤・榊原に続き、 2000年のヴィエトによる研究報告もあるが、種数が一の場合のような詳しい分類には至っていない。

有理曲面の、堀川指数が零ではない種数二曲線束は、 適当な平面曲線のペンシルと対応して、四つの族に分かれる事を昨年度に示している。 本年度は四つの族に分けられた各族に対して、 種数が一の場合の E8 と同じ役割を果たす、フレーム格子を決定した。 つまり、各族に対して最大階数のモーデル・ヴェイユ格子の高々部分格子からしか、 他のモーデル・ヴェイユ格子は得られない事を示した。 四つの族それぞれが持ち得る特異ファイバーの種類と本数の組み合わせは、 各族に対応する平面曲線の次数が低い順に並べると、 三、八、二、十八通りである。 すべての組み合わせに対して、特異ファイバーの既約成分が ネロン・セヴェリ格子に占めるクラスを、丹念に記述した次第である。

モーデル・ヴェイユ格子の研究を、 種数が二の場合にも特異点の変形理論へ応用するにあたって、 モーデル・ヴェイユ群が自明となる種数二曲線束を決定する事が重要である。 四つの族の内の二つに対しては、そのような種数二曲線束すべての構成を明らかにした。 残りの二つに対しては例を構成した。 それらが持つ可約な特異ファイバーの双対グラフと、 拡大ディンキン図形を経由して関連立てながらフレーム格子の基底を精選した。

研究発表

学術論文(平成19年度に出版のもの)

  1. Shinya Kitagawa, Maximal Mordell-Weil lattices of fibred surfaces with pg = q = 0,
    Rendiconti del Seminario Matematico della Universita di Padova 117, (2007), 205−230頁。
  2. 北川真也、種数2の有理超楕円曲面のフレーム格子
    報告集 「第五回代数曲線論シンポジウム」、2008年、18−27頁。
  3. 北川真也、種数2の有理超楕円曲面のフレーム格子と双対な特異ファイバー
    日本数学会 代数分科会 講演アブストラクト、2008年3月、133−134頁。

学会・研究集会での講演

  1. Shinya Kitagawa, Mordell-Weil lattices of hyperelliptic rational surfaces of genus two,
    COE seminar on Algebraic Geometry -- dedicated to Professor Noam D. Elkies,
    Sep 3--Sep 5, 於:慶應義塾大学、9月3日口頭発表。
  2. 北川真也、種数2の有理超楕円曲面のフレーム格子
    第5回代数曲線論シンポジウム、
    11月24日−11月25日、於:徳島大学工学部工業会館、11月25日口頭発表。
  3. 北川真也、モーデル・ヴェイユ群が自明なる種数2の有理超楕円曲面
    代数幾何小研究集会−沖縄−、
    12月8日−12月9日、於:沖縄工業高等専門学校、12月8日口頭発表。
  4. 北川真也、フレーム格子に双対な特異ファイバーをもつ種数2曲線束
    東北大学代数幾何学セミナー、1月18日口頭発表。
  5. 北川真也、種数2の有理超楕円曲面と E8 フレーム
    Hodge 理論・退化・特異点の代数幾何とトポロジー研究集会、
    3月10日−3月14日、於:東北学院大学、3月11日口頭発表。
  6. 北川真也、種数2の有理超楕円曲面のフレーム格子と双対な特異ファイバー
    日本数学会2008年度年会、
    3月23日−3月26日、於:近畿大学、3月26日口頭発表。
Shiny varieties